感覚を信じろ

まず最初に

★3の項目にして何を言ってるんだ?――そう思った方もいるでしょう。
まぁ、見ていってください。

ここまで辿り着くまでに色んな記事を読んでもらいましたが、最終的に信じるのは「感覚」で良い、と私は考えています。
ただし重要なのは、“知って”感覚に頼るのか、“知らずに”感覚に頼るのか。この差は、とてつもなく大きい。今日はこの点を深掘りします。


「知ったうえでの感覚」が強い理由

論理的に課題を定義し、打ち手を設計し、ゲーム開発に落とし込む――このプロセスを踏めるクリエイターは強い。
でも、それで必ず面白くなるなら、世の中のゲームは全部ヒットしています。

  • 論理(設計・検証)で絞り込む
  • 感覚(手触り・印象)で最後に決める

実はこの二段構えが最も成功確率が高い
だから現場では、最後の最後は「触って面白いか?」に戻るのが本質です。


人は“感覚”を鈍らせる

制作が進むほど、次のバイアスが感覚を曇らせます。

  • サンクコスト:ここまで作ったから引けない
  • 集団思考:大勢が良いと言っているから良いはず
  • 遠慮・配慮:相手の努力を否定できない
  • 疲労:判断が荒くなる
  • 自己正当化:過程で満足して結論をぼかす

結果、「微妙だね」「面白くないね」の一言が言えなくなる。
でも、ユーザーは容赦なくそこを感じ取ります。ここを見て見ぬふりをしないのが、プロです。


“感覚チェック”のミニ・ルーチン

制作の節目ごとに、5〜10分で済む“手触りチェック”を入れてください。初見の自分を取り戻すための儀式です。

  • ファーストインプレッション:最初の10秒で「ワクワク」したか?
  • 操作の手応え:押下→反応の遅延/過剰はないか?
  • フィードバック:音・VFX・画面揺れに快感の山はあるか?
  • 情報量:一画面で3つまでに絞れているか?
  • テンポ:テンポを殺す待ち時間がないか?
  • 没入阻害:チュートリアルの説明過多がないか?
  • やめ時/続け時:1分/3分/10分の各時点で次の一手が自明か?
  • 驚き:予想外の気持ちよさが一度でもあったか?
  • 不快の芽:イラッとした瞬間を秒単位でメモしたか?

メモは1行・時刻付きでOK。後から議論のタネになります。


よくある“感覚のすり替え”と対処

  • 「過程は正しい」結果は? 触って微妙なら、戻す勇気を持つ
  • 「言うべきことは言った」最後まで見届ける。誰かが“面白い”と言うまで終わらない
  • 「仕様どおり」気持ちよさは仕様化できない。数字で測れない快の議論を逃げない

たとえば、こんな問いで締める

  • いま、心が動いた?(動いてないなら“どこで”止まった?)
  • 説明しなくても伝わる?(初見で迷子にならない?)
  • 1分でハマる勾配ある?(最初の山が立ってる?)
  • 最後に一つだけ直すなら?(効果最大の一手に絞る)

まとめ

  • 最後は「触って面白いか?」に戻る。これがゲームの本質。
  • ただし、知識と検証で土台を固めた“感覚”こそ強い。
  • バイアスで直感は鈍る。仕組みで守り、ログで鍛える。
  • 「微妙だね」「面白くないね」を言える空気を、自分から作る

ユーザーは最初の印象で決めます。
リリース後に言われる前に、開発中のあなたの直感でまず気づきましょう。
肩の力を抜いて、俯瞰して、自分の感覚を信じてください。