言語化能力を鍛えよ

言語化能力とは?

「言語化能力」という言葉、私が大学や専門学校に通っていた頃には耳にしませんでした。
初めて聞いた方も多いかもしれません。ここでしっかり押さえておきましょう。

言語化能力とは、どんな抽象的な事象でも、相手にとって正確に、わかりやすく言い換える/テキスト化できる力です。
特にゲーム開発は「面白さ」といった曖昧なテーマに向き合う仕事なので、この力が他の職業以上に求められます。


抽象表現との戦い

ゲーム開発の現場ではこんな言葉が飛び交います。

  • 「XXのゲームみたいに、あんな感じで面白くしたい」
  • 「良い感じに盛り上がる機能を入れたい」

若手が多い現場、混迷を極めるプロジェクトほど、この“カオスな会話”は日常茶飯事です。

私自身が最初に言語化能力の必要性を痛感したのは、エンジニアとの対話でした。
エンジニアは「要件を正しく理解し、それに応える」ことを重視します。
だからこそ前段として、「正しく伝える」ことが必須なのです。

プランナー、デザイナー、ディレクター――誰が相手であれ、
「どんな体験を、どのようにして、何のために届けたいのか?」
これを言語化できないと、話は前に進みません。


具体例:カービィ

たとえば「星のカービィみたいな可愛いキャラを作りたい」という雑な依頼が飛んできたとします。

  • ピンクの丸いキャラ=可愛い
  • コピー能力で形が変わる=可愛い?

人によって粒度も解釈はバラバラです。

私が言語化すると、こうなります。

全体的に丸みを帯びたシルエットとシンプルな造形を持ち、見た瞬間に親しみやすさと可愛らしさを感じられるキャラ。大きな目とシンプルな口で感情表現が分かりやすく、柔らかくふわふわとした質感を想起させるデザイン。色彩は明るくポップなパステルカラーや原色を基調とし、視認性と愛らしさを両立させる。性格は無垢で好奇心旺盛、誰とでも仲良くなれるような温かみを持たせ、ゲームやグッズ、アニメなど幅広い媒体で展開できる汎用性を備えたキャラクター。

これなら求められている「可愛い」のイメージがブレにくい。
もちろんデザインの言語化は特殊なケースですが、練習には最適です。


言語化を鍛える方法

  • 日常的に自分の考えを文章にする(ブログ、SNS、動画台本など)
  • 抽象的な依頼を、誰が聞いても理解できるレベルに書き換える練習をする
  • 具体と抽象を行き来してみる(例:「面白い」→「どういう体験が?」→「なぜ面白いのか?」)

私自身もブログやYouTubeを続けている理由のひとつが、この言語化トレーニングです。


私の経験と反省

正直に言えば、私は言語化が得意ではありません。
今でもコンプレックスはあります。
理系寄りで、文系的なセンスはゼロ。20代後半までは本当に苦労しました。

でも、自覚したからこそ意識して鍛え続けました。
結果、ディレクターとして人を導く立場に立てるようになったのです。

人によっては30代、40代になってからようやく気付くかもしれません。
ですがその頃には仕事も家庭も忙しく、訓練の余裕は少ないでしょう。

だからこそ、今この瞬間から鍛えておくべきスキルなのです。


まとめ

  • 言語化能力は「抽象を具体にする力」
  • ゲーム開発は抽象表現が多いため、必須スキル
  • 言語化ができないとチームの認識がズレる
  • ブログ・SNS・台本などで日常的に鍛えられる
  • 早いうちに鍛えておかないと、将来取り返しがつかない

危機感と共に、今日から言語化力を意識して磨いていきましょう。